ヒステリックプルーン

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病的なほどに鉄分やユーモアを含んでいます

恩田陸「蜜蜂と遠雷」が“ちょっと読みたくなる”読後感

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こんにちは。

諸事情で山ほど図書カードをもらって読書充なみちです。

 

今回は恩田陸蜜蜂と遠雷を読んでいてもたってもいられなくなったので、

この読後感をより多くの人と共有するためにも、

ちょっと気になる読後感を書いていこうと思います。

 

ネタバレはほぼありませんので、気になった方は読んでみてください。

 

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あらすじ

全編ピアノコンクールでの物語

ストーリーは色んな登場人物の視点から描かれる。

母の死によるドタキャン以来、8年ぶりの舞台である天才・栄伝亜夜

日系三世のペルー人の母を持つ、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール

妻娘がいるサラリーマンの凡人・高島明石

ひたすら1番手の重圧に耐えるアレクセイ・ザカーエフ。

そして死した世界的ピアニストからの「最期のギフト」、謎の少年・風間塵

これら演奏家たちの仁義なき戦いが今、始まろうとしているーーーー。

 

 

 嘘です。めっちゃ仁義はあります

じん‐ぎ【仁義】

1 仁と義。儒教道徳の根本理念。
2 道徳上守るべき筋道。「仁義にもとる行為」「仁義を重んじる」
3 他人に対して欠かせない礼儀上の務め。義理。

 

 

読んでほしいところ

ピアノのコンクールを小説に?

耳で楽しむ音楽の世界を目で楽しむ文章の世界に落とし込むというこの行為、

普通に考えたらどうやって?と思います。

 

しかし、読んでみればわかる恩田陸の文章力

彼女の無限の引き出しから繰り出される情景描写が凄まじいです。

 

時には宇宙であったり、ベタなドラマであったり…

クラシック音楽に明るくない僕でも、ドビュッシーの鮮やかさ」が伝わってきます。

 

ドビュッシーの凄さは結局何回聴いても新鮮なとこだよね」

と明日僕はドヤ顔で話します。一回も聴いたことないけど。

 

 

天才の中に光る、凡人の存在

ピアノの物語ですが、ピアノ素人の僕でも楽しめるのには仕掛けがあります。

その大きな一つとして、凡人・高島明石の存在がありました。

 

ピアノコンクールに出場する殆どの登場人物は、それぞれ苦悩や挫折はあるものの、全員が天才。

天才は練習とか緊張とかしません。これマジです。

 

ところがこの凡人・高島明石は別。

本番前はずっと練習。舞台袖でもド緊張します。

この凡人・高島明石視点が描かれることによって、天才が一層引き立ちます

 

そして何より感情移入がすごい。

もう高島明石に報われてほしいという私情でページをめくる手が止まりません。

愛されキャラ高島明石が成果を得る瞬間はガチ泣きしました

 

どうでもいいですが読後感「ガチ泣き」が出てくるボキャブラリーのなさガチ泣きしそうです。

 

 

ステージマネージャー田久保の存在

この物語においてステージマネージャー田久保の存在は大きいです。

ステージマネージャーとは、指揮者、ピアニスト、楽員の出入りを促し、ステージ配置も決める役割の人。

 

その中でも有名なステージを何度もマネージメントしてきた

ステージマネージャー田久保には観察眼があります。

そのステージマネージャー田久保の類まれなる観察眼から繰り出される

ピアニストたちへの声掛けは必見。

 

いつの間にか読者の脳内で、

ステージマネージャー田久保の登場=新たな演奏の始まりという

方程式が出来上がります。

数々の名演奏家たちを生で見てきたステージマネージャー田久保視点のパートは、読者をもステージマネージャー田久保に変えてしまう魔力があります。

 

正直ステージマネージャー田久保と言いたかっただけなのでこの辺は読み飛ばしてもらって結構です

 

 

天才の発想はわからない

この物語、いろんな登場人物の視点から展開されていきます。

 

その中で、一番の天才はなんといっても風間塵です。

ピアノを持っていない、コンクール経験もない、

それなのに名ピアニストのお墨付きをもらっているという特異な存在です。

 

この風間塵視点だけ、量がものすごく少なく、

その心理描写もなかなかに抽象的でメルヘン。

このミステリアスさが天才を引き立て、深みを与えます。

 

一方、凡人・高島明石安心感や、

コンクール審査員である嵯峨三枝子豊潤な語彙

そしてステージマネージャー田久保類まれなる観察眼等、

様々な登場人物からのコンクールへのアプローチによって、

物語を飽きさせない面白さがあります。

 

 

まとめ

直木賞本屋大賞のW受賞を成し遂げた蜜蜂と遠雷

魅力的な要素がふんだんに織り込まれているので、

本屋で見かけたらぜひ手に取ってみてください。

 

この記事が皆様が蜜蜂と遠雷というステージに立つための、

ステージマネージャー田久保のような存在となれれば幸いです。

 

 

ステージマネージャー田久保はマジですごい人です。

ステージマネージャー田久保の活躍だけを楽しみに読んでも損はないと思うのでぜひ。

 

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

 
蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)