理系に『引き寄せの法則』を勧めるのはやめてください
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最近、友人が『引き寄せの法則』にハマったらしい。
何かいいことが起きれば引き寄せのおかげだと言う。
教科書で登場しない法則は信じない私からするとそんな胡散臭い話はない。
そう思って適当に聞き流していたのだが。
とうとう私に一通の恐ろしいLINEが届いた。
このサイトがわかりやすいから○○も見てみて!
ついに得体の知れないあの法則のマニュアルが届いた。
これはガチガチでバチバチの現実主義者でありながら、変な宗教に引っかからないようセキュリティ心理学まで学んでいる鉄壁こと私への挑戦状と受け取った。
今回は『引き寄せの法則』の嘘を暴いていきたい。
勿論私の主観的な考察によるものであり、誰が何を信じようが個人の勝手である。
引き寄せの法則を否定するわけでもないし、肯定するわけでもない。
という事で、当記事はエンターテイメント感覚で読んでいただきたい。
『引き寄せの法則』のここがおかしい
(略)...何かを引き寄せるということは、自分の中にある何かが、何かを引いて近寄らせる、という意味です。自分の中の、なにが、引き寄せるのでしょうか?この世界に存在するすべてのものには波動がある、というのはもうご存知かと思います。人間や動植物、コップや石、そして思考や想念にまで、ありとあらゆるものには波動があり、細かく振動しています。
まず引き寄せの法則の説明の導入部分から見ていきたい。
確かに粒子は波動をもつことは量子力学のベースとなる根幹的な現象である。
しかし思考や想念が波動を持つというのは一部の心理学者が提唱しているだけで、物理学的根拠は現在、存在しない。肯定もできないが、否定もできない"説"である。
量子力学の大元となる現象と現段階で説に過ぎないものの二つを同列に並べる点に違和感を感じざるを得ない。
よく、「目に見えるものしか信じない」という方がいますが、人間の目で見えるものなんてたかが知れています。現に、私たち一般の日本人の視力では見えない、数キロ先の動物が、アフリカのマサイ族の人達には見えたりします。もし、人間の視力では見えなくても存在するものがあってもおかしくはありません。むしろ、人間には解明できていないものの方が多いくらいかもしれないのです。
人間には解明できてないものは確かにたくさんある。
「人間の目で見えるものはたかが知れている」の例えで日本人とマサイ族を比べるのは少しマサイ族に失礼な気がするが、本題から外れるため言及は控えておく。
(中略)...あらゆるものには波動があり、すべて振動しているとお伝えしました。それぞれが別々の波動を有していますが、同じ波動のものも、もちろんあります。例えばラジオやテレビなどです。ラジオは周波数で合わせることが出来ますね。だけど、1ヘルツでも周波数がずれると、周波数が合わずに雑音が入ってきます。
同じ波動?に少し違和感を覚えるが、とりあえず話を進めていく。
これと同じように、想念や思考も、共鳴する同じ波動があります。これを『波動共鳴』と言います。「なんか気が合う」とか、逆に「一緒にいるとなんとなく嫌だ」と感じるのは、相手から発する波長と、あなたの波長が合わないからなのです。よく、類は友を呼ぶと言いますが、これがまさにそうですね。
『波動共鳴』というワードが当たり前のように出てくるが、これが罠。
確かに物理学には波動が共鳴する現象が存在する。
しかし、ここでいう波長は物理学で使われる波長とはまったく別の波長であり、言葉を借りるなら「人間には解明できていないもの」である。
実際に存在する現象と未だ不確定な現象、二つの情報が混交している。
このように事実の中に信じさせたい話を紛れ込ませ、信憑性を上げる作用を心理学の用語で「マグナカルタ効果」という。
訪問販売や電話を使った詐欺にもテクニックとして用いられる。
さらにテクニックがもう一つ。物理に疎い人にとって難しい話の後半部分に誰でも共感できるエピソードを加えている。ここで、一部を理解させることにより話の全てを理解した気にさせる「テームズ話術」を使用している。
これは故スティーブ・ジョブズも取引先とのプレゼンの際に使用していた方法で、彼の著書にも記されているので是非一読してほしい。
似たような人達が自然と集まってしまうのは、波動が引き寄せあっているからです。少し難しく言うと、『固有振動数』が同じである、と言えます。つまり、同じような思考をする人と共鳴し合うのです。
「引き寄せ合っているからです」と断定している点が明らかにおかしい。
そうとも考えられる、という程度の話を、実際に存在する用語(固有振動数)と絡めて話すことで信憑性を上げているのである。
前述の「マグナカルタ効果」を再び利用しているのがわかる。
「少し難しく言うと〜」のくだりはわからない人にわからないものをつきつけているだけである。
ちなみに、固有振動数は物理学で実際に用いられる用語である。
(中略)...人は、そんな風に、見たいものしか見ないのです。つまり、目に見えない幸運や欲しいものは、波動として常日頃からあなたの周りにあるのです。ただ、波動を合わせていないだけ。つまり、見ていないだけなのです。この原理を利用して、脳に『願望』や『なりたい自分』を見せてあげ(波動を合わせ)、潜在意識でそのゴールまで連れていってもらうのが、引き寄せの法則の本質です。潜在意識が目標まで連れていってくれ、欲しいものが手に入った、願望が叶った状態を「引き寄せた」と言っているのです。
この部分でようやく引き寄せの法則の本質にたどり着いた。
つまり目標を立て、マインドを向上させて目標達成するのが引き寄せの法則であるらしい。
あれ?ここはものすごくまともなこと言ってない??
引き寄せの法則なんて嘘に決まってる、だって「ザ・シークレット」を読んで実践したけど、叶った試しがないよ!引き寄せ系のブログからセミナーに参加したけど、ブログに書いてあるようには引き寄せられなかった!という人もたくさんいると思います。しかし一方で、引き寄せている人も大勢います。ビジネスで成功している人、有名人、効果を本に書いて出版している人さえいます。
次章に突入。
ここでは引き寄せの法則に対する誤解への説明があるらしい。
では、引き寄せに成功する人とそうでない人の差は何なのでしょうか?引き寄せなんて嘘だと言っている人の多くは、
- 引き寄せの法則は願えば(願うだけで)叶えられると思っている
- すぐに結果が出ると思っている
- 自分の都合の良いときにしかやらない
- おまじないかなにかと思っている
と思っています。
え?願うだけですぐに叶えられるんじゃないの?と思ったあなた。ちょっと誤解しているかもしれません。そして、この誤解、かなり危険です・・・
ここがこの引き寄せの法則のミソ。
「願い続けなければ叶わない」。これは言い換えれば「叶うまで願い続けなければならない」のである。
諦めたらそこで引き寄せ中断であるが、引き寄せ失敗ではない。
つまり引き寄せの法則の失敗率は0%。
うまくできている法則である。
余談ではあるが、失敗率が0%となるようにうまく設定されたルールは「デーモンズ・ルール」と呼ばれる。19世紀に東ヨーロッパで勢力を誇ったカジノ組織もこの手法を使っていて、文字通り悪魔のように騙すという由来からつけられた。
少し長くなってしまったため、ここからは駆け足で解説していく。
要するに引き寄せの法則とは、
目標達成のためのポジティブシンキングを用いた自己啓発
のようなものであると見受けられた。
確かにこの法則通りの行動をすれば、目標に近づくことも理解できた。
特にポジティブシンキングの面では純粋に感心できる部分が多々あった。
まとめ
私が今回気になった点は一つ、『根拠がエセ科学と同じ』ということである。
証明されていない事柄を物理学に結び付けて説明する。
これがどうもむず痒く、この法則を胡散臭く感じてしまう要因になっていると思う。
確かにこれは正誤の判断ができない読者の信憑性を高めるためには有用なテクニックである。
実は私が先ほど述べてきた「マグナカルタ効果」、「テームズ話術」、「デーモンズ・ルール」、
これらはすべて私がテキトーに作り上げた所謂真っ赤なウソというやつである。
これを読んでいる方がその嘘を見破れず私の話を信用してしまったように、
理系的知識に乏しいスピリチュアリーな人が引き寄せの法則を鵜呑みにしてしまうのは頷けることである。
(本当にジョブズの著書を読んだ方には深く頭を下げたい。)
ここまで長々と文章を書いてきたが、結局私は何が言いたかったのかというと、
『引き寄せの法則』を理系人間に勧めるのはやめてほしい、ということだ。
それっぽい偽理系単語を並べた根拠は、信用するうえで逆効果である。ムズムズする。
内容は良いだけに非常に惜しい。
法則という名前も少し気になる。いっそ『ハッピーになるおまじない』くらいの名前ならスッと入ってくるかもしれない。
何度も言うが今回の記事は引き寄せの法則を否定する記事ではない。
あくまで私の考えを述べただけなので、こういう考え方の人間もいるんだ程度のスタンスで見てほしい。
まあ、『引き寄せの法則』で私のように冗談を許せる器の大きな人間だけが引き寄せられているはずなので、無用な心配かもしれないが。